バリに半年住んでいた時の話 その1
とりあえずバリに着いて、半年過ごす為の第一歩は記せた?と思うので、プロローグ という文字は晴れて抜かしてしまおうと思います。万歳。
バリの朝、友人たちと合流して管理人室のワヤンの元へと向かう。
「スラマッパギ、ワヤン」(おはよう、ワヤン)
「スラマッパギー」(おはよう)
インドネシア語の挨拶は、「スラマッ〜」という。
朝なら「パギ」で昼なら「シアン」、15時以降(夕方)は「ソレ」で陽が沈むと「マラム」だ。
「スラマッパギ」(おはよう)
「スラマッシアン」(こんにちは)
「スラマッソレ」(こんにちは)
「スラマッマラム」(こんばんは)
になる。
とりあえず「スラマッ」を文頭につければ、何となく挨拶っぽくなるので覚えておくと便利である。
ワヤンと我々は同年代のように見えるが、警戒されているのかあまり口数が多くないのかそんなに会話は弾まない。我々も現地のインドネシア語に慣れておらずまだ流暢に話せない。
ワヤンは住み込みなので、管理人室には台所もあればテレビもあり、シャワー室や寝室もあった。全てがその部屋で完結するようであった。
とにかく我々は食料の買い出しだ。
朝の9時、街はもう皆起き出しており観光客も出歩いている時間だ。
南国は昼間が暑いので、人々は早朝から動いているのだ。
2日連続でパンだと寂しいので、ワルン(食堂)を探して食べようという事になった。
友人のミチコが持って来てくれた地球の歩き方に、「ローカル色が強いが観光客でもウェルカムな食堂」というお店が紹介されていたので、片道20分ほどかけて歩いて行く事になった。
バリは観光地であり、開発国の人々がお金を落とすリゾートだ。
お店の値段もピンからキリで、1食2000円するようなお店もあれば100円で済むお店もある。
我々は半年間ここに暮らす。踊りや現地の楽器を習うには、月謝がかかる。
そして日本からインドネシアの留学生はアルバイトが認められていないので、1食に2000円もかけていたらすぐに破産してしまう。
ジャラン・ゴウタマにあったデワワルンは、めちゃくちゃ安くはないけれど高くもない、ローカルにも観光客にも優しいお店だ。
もしかするとローカル向けの値段も存在していたかも知れないが何とか払える額であった。
友人たちは野菜炒めとフレッシュジュース、私はナシチャンプルというのっけご飯とバリコーヒーを注文してお腹を満たした。
野菜炒めは普通に出来立てで美味しかった。
ナシチャンプルも美味しかったと思うのだが、まだ現地の味に慣れておらず良し悪しが分からなかった。バリの米は日本でよく食べられるジャポニカ米ではなく、インディカ米だ。縦長で、あっさりした感じの米だ。その米に、色んな味の具を合わせて食べられるのが嬉しかった。
一口もらったフレッシュジュースは日本で飲むどんなフレッシュジュースよりも美味しかった。最初に飲んだのはアボカドジュースだったと思う。生まれて初めて口に入れたアボカドは私はジュースだったのだが、衝撃の美味さだった。
バリコーヒーは現地の呼び方だと「コピバリ(バリのコーヒー)」になるが、特徴的だ。コップにコーヒーの粉を入れ、お湯を注ぐ。練乳を入れてかき混ぜる。そのまま飲むと口の中がコーヒーの粉だらけになるので、粉が沈むのを待って飲む。
多分日本で飲んでもそんなに美味しくないと思うのだが、バリで飲むと甘ったるくてとても美味しかった。
店は外からもよく見えてオープンな雰囲気で、高い所と低い所に席があった。
欧米の常連らしき観光客が長居している姿もよく見かけた。
店員は若い男の子で、ドレッドのような髪型をしたクリクリした目の感じの良い、そして外国人慣れをしている人だった。
バリは観光地であるが、外人は目立つので結構ジロジロ見られるし、暇つぶしにめちゃくちゃ声をかけられるのだ。
適度に放っておいてもらえる感じもありがたかった。
腹が満たされると、到着連絡を家族に出来ていない事が少し心配になった。
しかしまだ海外で携帯を持つという事が普通ではなく、インターネット環境も非常に悪かったのでそれはまた後日という事になった。
デワワルンで食事をする事に成功した我々は、とりあえず昼食はパンで安く凌ぎ、夜にまた出掛けてみようという事になった。
ジャラン・ゴウタマを出てジャラン・ラヤウブドに戻りそこから更に北の我々の宿へ向かう道筋には、立派なお寺や絵画のギャラリー、ワルテル(電話屋)、王宮、市場なんかもあり大層賑わっていた。
道沿いにあるタトゥーショップで強面の兄ちゃんたちに冷やかしの声を掛けられながら、何とか宿に辿り着いたらガブリーが出かける所だった。
挨拶をしてとりあえず部屋に戻り、通った道の復習や食べた物、買った物の値段の記録付けと単語練習をして過ごした。
夜はデワワルンよりも近所にワルンを見つけ、そこでやはり野菜炒めと白飯を食べて、早めに眠りにつくことにした。
宿の周りは美しい緑の稲に囲まれていた。
カエルの声を心地よいBGMとしてその日は眠りについた。